農薬・化学肥料・添加物に頼らずに‘食’を創り出す、この20年間に出会った生産者の探訪記。食を探究する生産者や料理人や主婦の方に有機農業の情報も含め、生真面目に丹精込めて作られた食の技、思い、人、その背景を伝えていきたい。紹介する生産者は僕が心から応援したい一緒にあんぜんな食の世界を作ってきた仲間たちです。


〜北海道幌泉郡えりも町〜 えりも岬短角王国高橋牧場(2003.9.9訪問)
日本短角牛えりもビーフ
襟裳の大自然の中でのびのび放牧飼育
高橋さん


帯広空港からレンタカーで高橋牧場へ!
天候は下り坂の予報、都内の気温は30度、しかし、雲海の中から降り立った帯広は18度、ヒンヤリ感じる。
さあ、レンタカーで出発だとナビを操作するが上手く入力できない。エーイ5!5!走り始めると十勝地方らしい農業地帯の風景が連続した絵ように流れる。美瑛、富良野は北海道農業の絵葉書、道北部は寂寥感漂う広大な農業風景だなと思いつつ、本日の大移動は前半100キロ2時間の移動だ。



広尾町から海岸線に出て途中の川を覗くと鮭が溯上を始めて入る。写真に撮って見たがなんだか判らない。海岸線の随道を幾つも幾つも通過して地平線が開け始めると百人浜だ。

写真左に写っているのが百人浜
かつて襟裳砂漠と呼ばれていた百人浜は1953年から始まった一大植林事業で緑が再生されたところで襟裳岬の大地が遠望できる。


襟裳岬に近付くと・・・
岬に近づくと浜では拾い昆布漁を見ることが出来た。ロープの先につけたフックを沖に投げ、掛かった日高昆布を引き上げている。

傍らでは年配の女性が荒い波間に立ち込んで長い竿先の鉤手に昆布を引きかけているが、見ている私のほうがハラハラしてしまう。


後で漁師でもある高橋さんに話を聞くとなかなか大変で危険な拾い昆布漁だとサラッと言ってのけた。


牧場の位置を確認するため岬に立つ。

(日高山脈が海に沈降する先端部、襟裳岬は別名風の岬とも呼ばれている。年間平均風速毎秒9.5m、風速10m以上の風が吹く日は年間270日を数える日本屈指の強風地帯です)
写真はグルッと180度ターンした風景。

山手で一番近くに見えた建造物が風力発電のタワー。このすぐ下が高橋さんの牛舎とファームイン守人(まぷりっと)の交流施設です。文字どおりの襟裳岬日本短角牛の故郷です。


襟裳岬の短角牛飼育のはじまりは日高昆布漁師の収入安定のため〜
日本短角牛は南部赤牛の交配和牛で、放牧して草を飼料とし、比較的手間を掛けずに飼育繁殖でき、きめ細かい極めて上質の赤身肉質を持つ和牛として、襟裳では日高昆布漁の組合が漁師の収入安定のために導入した歴史から始まります。1940年代途絶えますが50年再び岩手より15頭の短角牛が導入され飼育が再開されました。
短角牛は放牧自然交配で繁殖し食肉専用種のため、母牛の母乳はすべて子牛が飲のんで育つから安心です。

問題となったBSE(狂牛病)のすべては乳牛(ホルスタイン)に発症しています。この病気は幼牛期に商品としての牛乳(母乳)の代わりに肉骨粉を代用乳として与えたことが原因です。肉用のホルスタインも同様です。
一年中海から吹き付ける風によって運ばれる塩分とミネラルは大自然の牧場に軟らかくておいしい牧草をはぐくみます。このおいしい牧草をたくさん食べて、のびのび育った短角牛は出荷期が近くなると、遺伝子組み替えのないトウモロコシや大豆・麦などの穀物を与え、さらに軟らかくおいしい肉質に仕上げて出荷します。もちろん、一般の和牛や乳牛のように抗生物質やホルモン剤などは使用しません。

高橋さんの先導で農場に向かうと古い牛舎が風をよけるよう谷間に建っています。冬季、風の強いとき短角牛はこの谷間に非難します。発電風車の際に建つ新しい牛舎は短角牛ファンの安定出荷に答えるために造り、同時に農業交流施設の「ふれあいファームイン・守人」を設置し牧場体験施設となりました。

彼との出会いは「らでぃっしゅぼーや」時代、岩手県山形村の日本短角牛生産者たちと付き合っている「大地を守る会」の畜産部門、加藤登紀子さんが名前を付けた大地牧場の代表だった道場さん(後に、藤本敏夫が代表を務める自然王国で一緒だった)の紹介でした。日本短角牛生産者の中でピカ一の奴がいる、彼だなと紹介されたのですが、まさか最果ての地も地、襟裳の先端だとは思わずスタッフを送り出したのでした。それから十年余り、何度か訪れる何も無いと歌われた襟裳も宝の岬に思えるようになりました。皆さんも是非一度、足を運んでみた下さい。


遅くなった昼食に短角牛のしゃぶしゃぶをたらふく食べ牛舎を見学。
700kg台の出荷期を迎える短角が伸びやかに育っています。高橋さんが「こう」と声を掛け顔を寄せるとチュ!

僕が手を差し出すとベロリ、ウゲ〜!とても人懐こいのです。


トラックに乗り換えさらに1km〜2km山側にある隣の放牧地に移動、ここは谷間が無いので牛が一望に見渡せます。

こーこ、こーこ」と呼ぶと広い放牧地の向こうから散開していた牛の群れが寄ってきます。これだけの頭数が近くによると圧巻で、ちょっと怖くて降りられません。しばらくは車中から可愛い子牛の姿を撮影。

気分も落ち着いてきたので車外に出ると、先ほどまで窓から覗き込まんばかりに「モ〜」と鳴いていた牛も逆に警戒して後ずさり。

高橋さんが牛たちを寄せた所で記念撮影の運びとなりました。しかし私の目はカメラではなく牛の動きを追っています。
私が高橋さんから離れると牛たちは高橋さんに寄り添ってきます、良くしたものだと感心してしまいます。


北側には小高い山。
西には傾き始めた日が薄い雲間を銀色に照らし海に反射しています。
南から東側にかけては岬に続く丘に白い風車と畜舎が小さく望めます。


この厳しくとも美しい空と大地に囲まれ、高橋夫妻の愛情のもとで襟裳短角牛はたおやかに育っていくことでしょう。とても大変な仕事でなのでしょうけれど、高橋さん、これからも安全な牛肉を送り続けて下さい、よろしくお願いしまっせ。

サー、夕日を追ってこれから余市まで北海道を東西に横断だ!