農薬・化学肥料・添加物に頼らずに‘食’を創り出す、この20年間に出会った生産者の探訪記。食を探究する生産者や料理人や主婦の方に有機農業の情報も含め、生真面目に丹精込めて作られた食の技、思い、人、その背景を伝えていきたい。紹介する生産者は僕が心から応援したい一緒にあんぜんな食の世界を作ってきた仲間たちです。



〜長野県上水内郡三水村〜 農事法人アップルファームさみず(2003.9.訪問)
減農薬栽培でりんごを作りはじめて30年余
甘みと酸味のバランスが絶妙な旨味をつくる
山下さん

小雨の降る長野を出発して山下さんに電話をした。
「信州中野IC方向のカーブを左、大倉の信号から2つ目を右、随道を越えて6本目の電信柱の道を左、アップルファームさみずの看板があるよ」の説明に同行者は判ったようだが、一向に18号線に出ない、不安を感じているうちに三水村に入った。このあたりなのだが判らないと言う。地理が詳しいゆえに近道を取ったと説明されたが目標地点をひとつも通過していない。アッチャ〜。同行者はさらに走って探そうとするのでストップ。小学校の見える交差点から再度電話をした。
迎えに出るから待っていてと電話が切れてから2〜3分後、山下さんが現れた。安堵。



「津軽」の出荷がひと段落つき、ファームの他の皆さんは次の品種の出荷に備えて、リンゴの葉取りに出ていた。


アップルファームさみず
長野市の北端から約5kmに位置する三水村は全国リンゴ生産量の1%を生産する日本一の「りんご村」だ。今から30年程前、日本有機農業研究会青年部の頃、山下さんと4人の仲間は農薬と化学肥料にたよる環境破壊型の果樹栽培を止め、環境と健康を守ることのできる有機農業に転換しました。先人のいない果樹栽培は、農業をしたことの無い人にとっては想像を越える苦労と努力を積み重ねることによって、今日ではいつでも安心して皮ごと食べることができるリンゴを、多くの生活者に届けることが出来るまでになりました。
2002年には農業生産法人「(有)アップルファームさみず」を設立。同じ志を一つにする仲間も30名に増え、合計の栽培面積も30町歩となり安定的な供給体制も整いました。



一般的なりんご栽培の農薬は・・・・?
一般的なリンゴ栽培で指導される農薬の年間防除回数は25回前後、さらに特定病虫害の防除回数が加算されます。


アップルファームさみずの減農薬栽培
ここアップルファームでは年間8回程度ですから3分の2低減した分をリンゴの木の健康を維持増進のために、今でも様々な方法を試行し続けています。
土壌分析をして土の健康状態と土中の肥料成分を数値的に把握、この分析結果に基づいて施肥の設計をして有機肥料を施し、病虫害の予防のために木や葉に有機活性液を散布したりと、農薬化学肥料を散布する以上の手間と努力と時間を掛け、愛情と誠実を注いだリンゴを生産しています。
今年も「アップルファームさみず」から、おいしくて安全で瑞々しいリンゴが届きます。

りんごの加工品もいろいろ
この他、リンゴは生食用以外にもジュース、ジャム、アップルソース、リンゴ酢、アップルシードルの原料になります。これらの加工品は多くのファンがアイデアを出して作り出したとても安全な加工品です。一度ご利用ください。



さあ、雨が強くならないうちに農園に行きましょうと、丘の中腹で車を止め「陽光」の果樹園へ入ると、気分はすっかり「まだ上げ染めし前髪の・・」島崎藤村。

坂道を少しくだると「千秋」、そこで山下さんがやおらリンゴをもぎ取り、頭に巻いていたタオルでゴシゴシ、バキッと手で半分に割りハイと差し出した。
ザクッとかじると高い糖度を酸味が程よく抑え、リンゴリンゴしたおいしさが口に広がる。けれんみの無い味だ。最近のベタベタしただけのリンゴではこうはいかない。口の中がまずくなる。

農道を隔てて「ふじ」が色付き始めている。

いい樹形だなと眺めていると、そこここに薄茶色のひも状のものが下がっている。フェロモントラップだった。メスの匂いでオスを誘引し繁殖を防ぐ方法だ。これで複数回の農薬散布を削減できる。



畑の脇に萱の束が幾つか並べてあるので何かと質問すると、受粉と害虫の天敵としての日本蜂の巣であるとの説明だった。果樹園の中は少しでも安全なリンゴを作るために様々な研究努力がなされていた。うれしいな〜

今年は冷夏だったが作柄は悪かったのではとの問いに「リンゴは花が咲いて実るまで他の果物と違い、いちばん時間が掛かる経済効率の悪い果物ですが、もともと寒さに強い果物でもあるので大丈夫」との返事だった。いよいよこれから出荷の本番を迎えるリンゴ、今年も「うまいぞ〜」と安心して本州の一番長い横断コースの帰途に着いた。
もうすぐ新蕎麦の季節が来る、この間の臼田町と今回とも立ち寄れなかった蕎麦と日本酒を味わいに、この秋また来るかと思いつつ五一ワインをゲットしていた。